入れ歯(義歯)
入れ歯づくりは思いのほか大変です。型を取ったら次に出来上がるのかとよく聞かれますが、できあがるまでには、最低5回の治療過程を経なければ完成には至りません。
①まず既成の型を取る道具でだいたいの型をとります。
②①で取った型をもとに患者様お一人お一人にあった型を取る道具(トレー)を作り、そのトレーを用いて本型を取ります。
③②で取った型の上で咬み合わせを取るための道具(バイト)を作り、咬み合わせを作ります。
④咬み合わせが良いか前の格好が良いかなど調べ、直さないといけないところを修正します(洋服で言うと、仮縫いの段階です)。
⑤入れ歯完成です。しかし痛いところがあれば後日来院していただき、何回か調整しなければいけません。また『よみがえり現象』といって入れ歯が新しくなると咬み合わせが本来あるべきところに変化してしまい、人工の歯を全部はずし咬み合わせをすべて直さなければいけないこともしばしばあります(10人に3人くらいは『よみがえり現象』が発生します)。
入れ歯作りの問題点とコピー義歯
入れ歯づくりは基本的には以上のような作り方をしますが、問題がないわけではありません。問題点は、
①歯ぐきの型どりが咬む力がかかっていない状態で取られている(歯医者が手の圧で押さえて取っているだけ)。そのため咬む力がかかると歯ぐきは柔らかいので変形し痛みが出るし、また歯ぐきに合っていないので入れ歯と歯ぐきの間に食べ物がはさまったりする。結果的に痛みが出て調整に何回も来院が必要になる。
②いきなり新しい入れ歯が入るので、靴を新品にした時のように違和感がある。さらに足と違い口の中は敏感なので、靴よりも慣れるまで時間がかかる。又入れ歯は年齢の比較的高い方が使われるので、慣れる能力が落ちてきており、使いこなしていただくまでが大変である。
③最初の入れ歯を入れてから10年以上の方は骨の上の歯ぐきが薄くなっており、歯ぐきが果たしているクッションの役目が少なくなっている。そのため固い普通のプラスチックの義歯床(入れ歯のピンク色をしたところ)ではどうしても痛みが解決せず、いくら調整しても痛みが取れない。
当院では、以上の3つの問題点について、以下のような方法で解決しています。
・①と②の解決法→治療用入れ歯を作る
1.コピー義歯を作ります。(これまで曲がりなりにも長期間、お口の中で慣れていただいている入れ歯であるため、手直しをすれば、原型として使えることが多いです。この段階で調整して十分使えるようであれば、入れ歯を新しく作る必要はありません)
2.歯ぐきの下の骨のやせ具合、歯の並び方、咬み合わせなどを患者様の現在のお口に合うように調整します。
3.2.の調整を繰り返すと、最初のコピー義歯とはかなり形状の違った入れ歯になってきます。患者様に実際の食事でそれを使っていただきながら、咬んでも痛くなく物がはさまらずピッタリした感じの入れ歯になるまで何度も調整を行います。
4.3.の入れ歯をそのまま本当の完成入れ歯に作り替えます。3.の段階で痛くなく咬めるよう何度も調整しているので、完成した入れ歯はかなりスムーズに使っていただける入れ歯になります。
・③の解決法→シリコンゴムを歯ぐきに直接当たる部分に入れる
通常の硬いプラスチックの入れ歯が直接歯ぐきに当たっていることが問題である場合は、歯ぐきに相対する入れ歯の部分にシリコンゴム(生体に対する害は全くありません)を使って解決しています。
※基本的なやり方で、入れ歯を作ることはもちろん健康保険が適用されますが、以上の2つの解決法については保険の適用外となっています。症例によっても異なりますが、当院では上下の入れ歯それぞれ約9万円からで上記のような治療をいたしております。
コピー義歯を用いた当院での症例
上下ともに条件が悪い総入れ歯の例
義歯完成
インプラントを用いた入れ歯
また、どうしても入れ歯がはずれやすい、安定が悪いといわれる方には、2本くらいのインプラントを植立することによって、入れ歯を固定する部分ができ、大変安定する入れ歯になることも多く経験しています。
歯が全くない、または残った歯が少ないあごにインプラントというとかなりの本数をいれないといけないし、費用も相当かかるし、なによりもたいへんな外科処置がいやだと思いの方がほとんどではないでしょうか。
そういう方には入れやすい場所を選び、なるべくインプラントを入れても後に痛みが残らないところに必要最小限の本数(1~2本)を入れ、その上から入れ歯を作るという方法でご好評をいただいております。
詳しいことはお気軽にお問い合わせください。また、インプラントのページも参考にしてください。
当院でのインプラントを用いた入れ歯の症例(歯が全くない患者様)